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2005.06.27

敷金問題と消費者契約法

平成16年12月17日の大阪高裁判決は、高裁レベルで敷金問題において消費者契約法を適用した初めての例である。高裁が支持した下級審判決から判決要旨を引用する。

1 消費者契約法施行前に締結された建物賃貸借契約が同法施行後に当事者の合意により更新された場合,更新後の賃貸借契約には消費者契約法の適用がある。

2 建物賃貸借契約に付された自然損耗及び通常の使用による損耗について賃借人に原状回復義務を負担させる特約は消費者契約法10条により無効である。

ここで触れられている消費者契約法10条は非常に重要な条文なので、これも引用。

10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

私の場合は本契約の締結が平成15年2月なので、消費者契約法施行(平成13年4月1日)後であり、1は問題にはならない。今回重要なのは、2なのであるが、これを判例に即して言うと、

1. 民法上、借主は普通に使用して、使用し終わったままで返せばいいところを、「まっさらな状態」にして返せという特約を結ぶのは、借主の義務を一方的に加重するものである。

2. 借主にしてみれば、

(1)契約を締結するときに、明け渡し時の原状回復費用を予測することは非常に困難であるし、
(2)実際に自然損耗の有無を争おうとした場合は、敷金返還訴訟を起こさざるをえないし、
(3)契約内容に疑問を持ったからといって、契約書の文面を変更させるような交渉力は持っていない、

のだから、このような特約は、情報力及び交渉力に劣る借主の利益を一方的に害する内容である。

日本語を理解している大の大人がハンコ押してるんだから、それはきっちり守ろうよ、というのは、典型的な貸主の抗弁としてありうるが、もともと消費者(借主)は事業主(貸主)に比べて圧倒的に不利な立場にあるんだから、その不公平を法律で保護しようというのが、この消費者契約法の趣旨である。

もちろん、経年変化や通常損耗の原状回復費用を借主が(実質的に)負担するという契約は、「契約自由の原則」から言っても、認められるべきではあるが、それについても、本判例では、一定の要件が示唆されている。

賃貸人は将来の自然損耗等による原状回復費用を予想することは可能であるから,これを賃料に含めて賃料額を決定し,あるいは賃貸借契約締結時に賃貸期間に応じて定額の原状回復費用を定め,その負担を契約条件とすることは可能であり,また,このような方法をとることによって,賃借人は,原状回復費用の高い安いを賃貸借契約を締結するかどうかの判断材料とすることができる。

つまり、

1. 原状回復費用をあらかじめ賃料に織り込んでおく。なので、明け渡し時に請求書を押し付けるのはナシ(でも、これってあらためて書くまでもなく、通常の考え方?)

もしくは、

2. 賃貸期間に応じて定額の原状回復費用を定めておく

ということだが、いずれにせよ、契約時に、将来的に負担する総額をあらかじめ把握して、他の物件の条件とちゃんと比較できる状態でなければいけない、ということなのである。

しばらくお勉強シリーズが続いたので、明日以降は、私の場合の具体的な事例について触れていきたい。

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